久しぶりのブログ更新となります。
今回は、PMTCなどで私がお世話になっている歯科院長・平出洋一先生が教育に関するご著書を出版されたとの知らせを受け、早速拝読させていただきました。
タイトルは『中学受験の勉強を始める前に読む本 勉強効率が倍増する3つの力』。
一見すると受験対策の本のように思われるかもしれませんが、その本質は「子どもとどう向き合うか」「どのような準備をするか」を親と子の双方に問いかける、非常に深い内容となっています。
本書で平出先生が提案しているのは、「集中力」「印象力」「創造力」という3つの力を育てることです。
この3つの力は、成績の向上を超えて、子どもの生きる力そのものを支える土台となるという視点が全編に貫かれており、受験という枠にとどまらない大きな学びを与えてくれるものでした。
とりわけ印象に残ったのは、「模擬試験の結果に一喜一憂するのではなく、間違えた原因を自分自身で分析する姿勢が“できる子”を育てる」という考え方です。これは受験勉強に限らず、社会に出てからも必要とされる力ではないでしょうか。
また、子どもが勉強に集中しやすい環境を家庭の中に整えることの大切さ、さらには子ども自身が自分の学びを振り返る機会を意識的に設けることの重要性も説かれており、いずれも家庭で今日から実践できる内容ばかりでした。
もうひとつ特筆すべきは、「家族全体で受験に向き合う姿勢」が重視されている点です。
親が子どもを一方的に指導するのではなく、子どもの努力や悩みに対して共に寄り添い、歩む姿勢こそが大切であるという考え方には深く共感しました。
また、平出先生は歯科医としての長年の経験を生かし、学力と身体の関係についても専門的な視点を提供しています。たとえば、集中力を高めるには「深い呼吸を意識すること」が効果的であること、さらに血液中の酸素運搬能力を高めるためには鉄分を含む食事が不可欠であること、そして「舌の正しい位置」や「こまめな水分補給」「室内の換気」といった、私たちが見落としがちな基本的な生活習慣の重要性についても触れられており、読んでいて何度もうなずかされました。
印象力については、健康的な口元や笑顔が子どもに自信を与えること、そして「自分の強みや弱みを自覚すること」が、対人場面での表現力につながることが説かれています。ただ表面的な印象を整えるというよりも、自分らしさを理解することが自信へとつながるという内容は、非常に示唆に富むものでした。
創造力についても、単なる発想の豊かさではなく、脳と血流の関係を正しく理解することや、勉強だけでなく運動・食事・遊びを通して脳を活性化することの大切さが述べられていました。「遊びも創造力を育てる大事な時間である」とする視点には強く共感しており、本書を通じてその重要性が改めて裏づけられたように感じました。
本書は単なる勉強法の本ではなく、親自身が子どもをどう支え、どう信じ、どう共に成長していくかを改めて考えるきっかけをくれる一冊です。
「偏差値や模試の結果に一喜一憂するのではなく、どうしたらわが子の可能性を最大限に引き出せるか」という視点を持ち直すことができれば、受験というイベントは、むしろその子の人生をより豊かにする土台にもなり得るのだと感じました。
もし今、お子さんの勉強や受験に関して悩みや不安を感じている方がいらっしゃれば、ぜひ一度本書を手に取ってみてください。今日からでも取り入れられる工夫が詰まっており、きっと親子の関係や学びのあり方が深まる一歩になると思います。
歯科臨床の積み重ねから導き出された教育的示唆
