昨今の教育改革の一環として、文科省を中心に進められている「高大連携」というのがあります。
高大連携とは「高校と大学が連携して教育を行う」ことを意味します。
具体的には、高校生のうちから大学の講義を体験できるというものが多いですが、他にも大学生と共に学び合うようなものもあります。
勤め先の工科大でも今年6月より立教女学院中学・高等学校の生徒たちを対象にプロジェクト「サイレント・コミュニケーション体験と情報工学による聴覚障害支援」をスタートさせました。
最初の数回は、初めて手話に触れるであろう生徒にまずは、手話という視覚言語の文法体系についてお話をさせてもらいました。
もちろん、生徒たちにとって受動的な講義にならないように能動的な活動も取り入れ、オンライン上でジェスチャーゲームをしたり、手話の実技指導をしたりしました。
そして、8月の最後の講義では、高校生がキャンパスに来て、初めての対面として研究室の学生と一緒に難聴体験をしてもらいました。
自分だけが聞こえず他者の会話が全く分からないという孤独の状態を体験してもらった生徒たちが、少しでも何かを感じてくれたら嬉しいです。また、音声言語が主体の社会において、聴覚障害者は24時間365日孤独であるという人が少なからず存在していることも伝えました。
アメリカの精神科医・社会心理学者のハリー・スタック・サリバンにこんな言葉があります。
「人間は人間関係のなかに、自分の存在や価値や意味を知る」
聴覚障害者が自分の存在や価値や意味を知るためには、聴者と同様に豊かな人間関係のなかにいる必要があります。
人間と人間が関係するためには、自ずとコミュニケーションが生じます。
そのコミュニケーションの中にある人間の言葉や感情などの音声情報の受信に困難さがある聴覚障害者にとって容易に受信できる情報とは?
と、講義の最後に自分の思いを伝え、本プロジェクトを終えました。
本プロジェクトは、研究室代表の吉岡先生が考案した「ハイブリット授業配信システム」のおかげでオンラインでも対面でも終始スムーズに講義ができました。ありがとうございました。
また、立教女学院中学・高等学校の先生や生徒たちのみなさん、ご受講いただき、ありがとうございました。