述語のひろがり〜絵日記指導〜

弊塾のロジカルシコウ科で扱っているドリル「論理エンジン」の開発者である出口汪氏によると、日本語の論理は次の四つの柱から成り立っていると述べています。
・イコールの関係
・対立関係
・因果関係
・文の要点(主語・述語・目的語の関係)

今回は、四つ目の柱の中の「述語」の指導について紹介します。
ドリル「論理エンジン」に記載されている文章の特性として、基本的に一文には主語・述語が必ず含まれるようになっています。例えば、「さっき雨が止みました」「僕は外で遊びたいです」などがあります。
一方で、日常的な生活場面での会話は「あっ止んだ」「外で遊びたいなあ」など、どちらかというと、主語が省略され、述語のみで済ませる場面の方が多いです。
文章にしても会話にしても、自分の気持ちや考えを他者に最も伝えたいこととして、述語は重要です。

その述語には、名詞や形容詞、動詞が含まれています。
名詞→(私は)小学生だ。
形容詞→(母は)優しい。
動詞→(牛乳を)飲む。

弊塾では、幼児のシコウ科の絵日記指導やロジカルシコウ科の作文指導において、述語の指導に力を入れています。
ここでは、ある塾生Aさんの絵日記指導の流れを紹介します。
日本手話を母語としているAさんは、乳幼児期から日本手話による言語環境の中でのびのびと育ち、思考力はもちろん、手話の語彙力もしっかり身についてきています。
そんなAさんの絵日記指導がスタートし、当初はかくことの楽しさを大事にした活動を意識して進めました。



まずは、 その日の印象的だったことを絵に描き、日本手話で会話しながら要所で指文字を混ぜ、絵の横に名詞をつけるように指導しました。絵と名詞のマッチングを繰り返し、そこから段階的に2語文、3語文と文章量を増やしていきました。
保護者様のご協力のおかげもあり、Aさんの絵日記は、動詞「しました」「かきました」だけでなく、形容詞も増えてきました。



それと共に手話表現も更に幅がひろがり、動詞の現在進行形「食べている」や、形容詞「かわいい」の連用形と動詞「なる」の過去形を組み合わせた「かわいくなりました」などが出てくるようになりました。
その手話表現をしっかり文字化させるために、弊塾では以下のプリントに取り組み、家庭での絵日記活動に活かしてもらいました。 



動詞や形容詞の活用には語幹と活用語尾があります。
語幹→形が変わらない部分
活用語尾→形が変わる部分

上記の日本語の規則性について、弊塾は視覚的に理解が進むようなプリントを作成しました。もちろん、このプリント学習に取り組むだけでは身につきません。手話による対話の中で、必要に応じて指文字や口形を混ぜながら日本語を組み込む言語指導も必要です。
毎回コツコツと取り組んできたAさんはついに、「かわいくなりました」を自ら書くことができるようになりました。(画像は、学校に提出している絵日記の一部です)


述語は、一文の中で非常に重要な役割を果たし、文の主要な意味を伝える部分です。その述語の中にある動詞や形容詞の規則性を見出し、日本語の表記の仕方を学ぶことが大切です。
Aさんの絵日記は、回数を重ねるごとに日本語の「型」が身についてきていることが分かるとともに、Aさんの個性が溢れ出ていることが強く伝わってきます。

※今回の掲載に関しまして、保護者様より許可をいただきました。感謝申し上げます。

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