東京工科大学との共同開発アプリ「ゆびもじ」

手話に関わっている人なら誰でも知っている指文字。
その指文字であそぶためのアプリを東京工科大学の佐々木和郎教授と共同で開発しました。
指文字とは、手の形を書記日本語の文字に対応させた視覚言語の一要素で、日本語の50音表で表される仮名文字一つ一つを片手で表すことができるよう考案されたものです。

全国のろう学校幼稚部教員を対象にした調査では、指文字は約65%の教員が用いていることが分かっています。また、日本語の音節を抽象、表記するために用いられている指文字は、聴覚を介さなくても容易に理解することができ、書記日本語の習得においてその教育的効果は多数の論文で実証されています。

例えば、人工内耳装用のお子さんにとって指文字は、視覚的辞書(指文字・口形・文字)からの情報と自分の発音を脳内でマッチングさせて聴覚的辞書を作り、音韻への意識を高めることができます。もちろん、人工内耳に限らず補聴器で聴覚活用しているお子さんでも指文字は日本語の獲得・習得にあたって有利であることが分かっています。

また、日本手話を第一言語としているお子さんにとっての指文字も、指文字の初出と文字との対応成立の時期において、文字を指さして指文字を表出するなどを通して両者の関連が形成され、この時期に指文字を通して日本語の音韻が形成されたと言われています。
私もろう学校教員時代に、重複障害のお子さんを含めて多くのお子さんが自分が使っている手話や指文字、口形はそれぞれ共起し、日本語の獲得・習得にとって有用であることが分かり、関連する論文を出したり、研究大会で教育実践の発表をしたりしました。

このように指文字は、日本手話を第一言語とするお子さんが、第二言語として書記日本語を身につけていくにあたって重要な役割を果たしていますし、人工内耳や補聴器によって聴覚活用しているお子さんや重複障害のお子さんにとっても有効であることが分かっています。
聴力に左右されず、誰でも視覚的に分かる指文字と文字、イラストのマッチングを幼児期から楽しく遊びながら学べるアプリをこれまでに見たことがありませんでした。
じゃあそのアプリを弊塾で開発しようと決めた時、佐々木教授がその案に強く賛同してくれ、共同で開発する運びになりました。



このアプリの特徴は、2~5文字のことばに清音46文字全て当てはめており、幼児期に多く使われている言葉や、手話・絵に表しやすい言葉が出てきます。そして、アプリに出てくるキャラクターは佐々木教授に、問題に出てくるイラストはろう者であるイラストレーターくじらしろさんという方に描いていただきました。お二人のご協力にはとても感謝しています。
とても愛らしいキャラクターと素敵なイラストをお子さんに見せることで良い刺激を与え、感性を磨くこともできます。
ぜひ、このアプリで聞こえないお子さんがあそびながら指文字を身につけていく様子を楽しんでいただけたらと思います!

https://apps.apple.com/jp/app/yubimoji/id1620813910
※このAppは、無料でiOSのみご利用いただけます。



参考文献:
・我妻敏博 2008「聾学校における手話使用の調査」『独立行政法人国立特別支援教育総合研究所,聾学校におけるコミュニケーション手段に関する研究』
・及川澄志 2020 「手話や視覚的日本語の共起事象に関する一考察-日本語の獲得・習得における教育実践から-」『手話学研究』
・田中美郷 2007「聴覚障害児の言語教育-最近の動向-」『音声言語医学』
・鳥越隆士・武居渡 2019 「第一言語として手話を獲得しつつあるろう児はどのように日本語を学んでいるのか?」『手話学研究』
・文部科学省 2020「聴覚障害教育の手引き」

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