本は子どもの思考力を育む必須アイテムです。
リビングや子ども部屋に本が置いてあるのとないのとでは、子どもに与える影響は大違いです。
本がいつでも子どもの目に入り、自由に手に取れる環境を整備することは読書環境(物的環境)の基本です。それに加え、物的環境だけでなく、定期的な絵本の読み聞かせや本がもつ世界についての対話などによる人的環境も大事です。
聴覚障害教育では、絵本はきこえない子どもが日本語を身につけるための重要な教材と言われていますが、それだけではなく、論理的思考力を育てることもできます。
例えば幣塾の幼児のシコウ科では、絵本を使って「この人は何をしているかな?」「どうしてかな?」など、
その日の言語活動のねらいに迫るための決め手となる中心発問を投げかけています。
そうすることで、お子さんは手話や音声を媒体に自分なりに事象を整理し、言葉で考えを述べるような展開に持っていくことが重要です。
要は、単に読み聞かせをするだけでなく、絵本を使ってお子さんと楽しくコミュニケーションをとりながら、情報を分析し、解釈し、建設的に検討するために必要な思考回路を子どもの中に作るようにすることが言語活動の基本的な考え方の一つになり、それは論理的思考力にもつながります。
もちろん他にも手話の音韻意識を育てたり、文字に興味を持ったりするような絵本を介した言語活動も行っています。
ここでは、幼児のシコウ科で活用している絵本を紹介します。
論理的思考力が育みやすい絵本『めいさくしかけ1、2、3』(ことうゆず著、学研プラス)
「ももたろう」や「さんびきのこぶた」など、有名な物語が短くまとめられているため、飽きずに最後まで読めます。また、「どうして鬼は悪いの?」「どうやって狼を追い出したの?」など、何が問題なのか、どのような解決策があるのかを筋道を立てて考えることにつなげる発問がしやすい絵本でもあります。
手話の音韻意識が育つ絵本『つみきでとんとん』(竹下文子著、金の星社)
手指を使って積み木の色々な形を表すため、音韻意識が育ちます。
文字に興味を持つような絵本『ライオンさんカレー』(夏目尚吾著、ひさかたチャイルド)、『どこかな?どこかな?』(今福理博著、エンブックス)
絵本の中の登場人物が文字で呼びかけたり、質問してきたりするため、お子さんの文字に対する意識の高まりが期待できる絵本です。
絵本の精選って難しいですね。
幣塾では言語活動のねらいに応じた絵本だけでなく、自分が好きな絵本をお子さんとシェアしたいなとも思って選んでいます。
「読み聞かせ」って「読み聞かせるといいことがある」というイメージがありますが、
それよりは「一緒に読もう」「一緒に絵本についてお話しよう」というようなそんな姿勢がいいんじゃないかなと思います。
ですので、親御さんも自分が読んでいて、面白くて楽しくて、それを我が子に伝えたいなと思える絵本は、全部良い絵本だと思います。
本は、聞こえない子どもにとって一番身近で親しみのある教材で、一生涯無くてはならない存在になり得ます。