この題名は百ます計算の生みの親である岸本裕史先生の著書『見える学力,見えない学力』から引用したものです。
この著書は1981年発行と古いですが、内容的には今読んでも多くの学びを得ることができますし、多くの親御さんや教員に勧めたい著書でもあります。
「見える学力」とは、全国学力テストや学校のテストの点数のことであり、
「見えない学力」は、授業での学びを自分のものにしていくために必要な基礎的な力のことです。
基礎的な力とは、言語環境・読書・遊び・勉強の習慣づけ・基本的生活習慣などです。
その基礎的な力を育むために必要なことが先述の著書に具体的に述べられており、
例えば、見えない学力を培うための言語環境として、「すじみちの通ったことばづかい」がありますが、岸本先生は「論理的に物事を考えるためには、必ず何がどうなんだという事実認識がまずできなければなりません。」と言っています。
まず、主語と述語を明確にした上で筋道を立てて物事を考えていくには、順接「それで」「だから」や逆接「しかし」「だが」を自由自在に扱えるようになる必要があります。もし、主語・述語・順接・逆接を十分に使いこなすことが難しいと、国語はもちろん、算数の文章題の理解も難しくなるでしょう。
論理を組み立て、思考を展開していくためには、家庭で交わされることばづかいによって、ほぼ決まってくると言われています。一方的な意思の伝達だけでなく、お子さんが発したことばを自身で客観的に見直してもらうために「どうして?」と発問したり、議論したりするようなゆたかな言語環境の中でお子さんの思考力は培われます。
岸本先生の著書には他にも砂糖による弊害や自己教育運動を促す読書など、40年前の教育観とは思えないほど、現代でも通用する家庭での生活習慣の大切さが記されています。
当時、このような考えをもっていた岸本先生にただただ敬服するばかりです。
参考文献
・岸本裕史『見える学力,見えない学力』大月書店、1981年