読み書きにおけるデジタル教育の再考

現在、様々な情報が氾濫している日本社会において、聴覚障害児が社会に効果的に参加するためには、手話や読み書きなどの基礎的な知識・技能はもちろん、情報のスキルも不可欠です。情報のスキルは、計算や記憶の代行など、読み書きの不足を補償する可能性もあります。

そこで教育現場では、これまで行われていた黒板や紙の教科書、プリントなどを使用するアナログ型の教育方法から、タブレットや電子教科書などのICT技術を活用したデジタル型の教育方法に切り替えることで、子どもの学習効果の向上を図っています。

ところが先日、以下の記事を見かけました。
ロイターより
https://news.yahoo.co.jp/articles/4670fa282529f950a088778224ba7cbe3e545633

要約すると、フィンランドの多くの学校では、11歳を迎えた児童全員にPCを配布したが、学力が低下した旨の記事です。また、リーヒマキの学校では、デジタル機器の画面が子どもに与える影響を懸念し、「脱デジタル化」に戻りつつあるようです。
その実情として、臨床神経心理学者のミンナ・ペルトプロ氏は、
脳はマルチタスクに非常に弱く、特に若年層ではなおさら上手に処理できない。(子どもは)PCで数学をして、インスタにメッセージがないか確認しに行き、また数学に戻って、さらにスナップチャットをやって、また数学に戻るということをやっている」
と、指摘しています。

また、IT先進国スウェーデンでも「紙と鉛筆のアナログ教育」に戻る計画の発表がありました。
IDEAS FOR GOODより
https://ideasforgood.jp/2023/09/27/sweden-schooling

2016年から2021年にかけて児童の読解力が低下しており、小学4年生の読解力に関する国際的な評価である「国際読解力調査」において、スウェーデンはヨーロッパの平均を上回っているものの、毎年ポイントを下げたことを受け、2023年8月から全ての学校で、タブレットを使った自主的なオンライン調査、キーボード操作の練習時間を減らし、「静かに本を読む・手書きの練習をする時間」に重点が置かれるようになりました。

こうしたフィンランドやスウェーデンの現状を受けて、日本でも文部科学省で議論が始まっているようです。
弊塾のロジカルシコウ科では、AIアプリ「モノグサ」による学習サービスを提供していますが、紙に書かれている文章をしっかり読んだり、鉛筆で文字を書いたりする読み書きの時間を多く設けています。特に鉛筆は、指先を動かすことで、脳に多くの刺激が生まれ、脳が活性化すると言われています。
もちろん、デジタルにはデジタルの良さがありますので、アナログを含めてそれぞれの長所を活かしながら、子どもの「これは文字で表現してみたい」という気持ちの芽生えにつながるような指導を目指しています。

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