文科省の「聴覚障害教育の手引き」によると、
ろう学校の子どもの在籍数に対する重複障害学級の子どもの在籍数の割合は、
平成2年度は、小・中学部で約13%だったが、
平成19年度は、約20%、さらに平成29年度は、約22%と、年々増加されています。
私自身、これまでに聴覚障害だけでなく、
知的障害や自閉症、広汎性発達障害などの子ども達の担任をしてきましたが、
ここ近年、発達障害の子どもだけでなく、
医療的ケアが必要な子どもの増加も見られ、
障害の種類や状態は益々多様化しています。
一人一人の教育的ニーズの把握はもちろん、
多様な方法を活用したコミュニケーションに関する指導や
生活を中心とした体験的な活動を主体とした教育も重要になってきます。
シコウカでも重複障害学級に在籍しているお子さんがいますが、
「重複障害だからこういう指導が必要だ」
という考えをもったことはありません。
お子さん一人一人の特徴を把握することに努め、
具体的な支援方法について保護者の方と確認しながら進めています。
どんな子どもにも思考力・視考力・試行力があり、
それを伸ばしたり、深めたりすることができるかどうかは環境が大きく影響を与えます。
環境には人との関わりによる「人的環境」、
発達を促す教材が用意されている「物的環境」、
そして、寝るための空間や食べるための空間などの「空間的環境」があります。
シコウカはろう重複障害のお子さんに対しても手話や指文字など、
視覚的に分かりやすいコミュニケーションができるような人的環境、
プログラミング教材だけでなく、微細運動や数の概念を図るための教材などが揃っている物的環境、
そして、質の高い活動をすることができるシコウカという空間的環境を提供しています。
ろう学校教員時代でも感じたことなんですが、
単一障害のお子さんと重複障害のお子さんの線引きって何だろうと思っています。
医学的診断の有無が一つの境目という見方もありますが、
その診断を受けていないお子さんの中にも、
周りの大人が明確に実態を掴んでいないケースがあるかもしれません。
そのためには「聴覚障害だから」「重複障害だから」と、
安易に診断名や障害名を受けての教育をするのではなく、
やはりどんなお子さんに対しても、
その人の困りごとや可能性を把握することが大事ではないでしょうか。